最悪の予感 

 

2021年9月5日記

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『最悪の予感』マイケル・ルイス(著) 中山有 (翻訳)

勝間和代さんがYoutubeで紹介していたのでキンドルで読んでみました。とても面白いし、パンデミックの知識を得るにはとても良い本と思ったので、ここで紹介します。

2020年ダイヤモンドプリンセス号でコロナウィルス感染症が発生した際、日本の対応がずいぶんアメリカから非難されました。そんなこともあり、なんとなく米国の方が対策が進んでいる印象を持っていました。例えば、乗客が解放される際、日本人乗客は普通に電車に乗って帰っていましたが、米国人はチャーター機で米国入国後は米軍基地で2週間隔離されるとのことでした。なるほど米国は違うなあ、と当時はぼんやりと思っていました。しかし、その後の展開はずいぶん違ってきました。

2021年9月時点の統計では次の通りです。

死者数累計 米国 約66万人 (人口3.3憶人)  日本 約1.6万人(人口1.2憶人)

 

コロナが蔓延する以前に、パンデミックが発生した場合、対応力のある国はどこかという調査を行ったようです。すると調査結果は、第一位が米国、二位が英国でした。

保健衛生分野の現場担当者には感染症に対する十分な知識と行動力がありました。また、CDCという保健衛生に関する専門組織には十分な知識はありました。しかし、この組織はパンデミックを防止するための行動力に欠けていました。簡単には解決できない構造的問題を抱えていたのです。それは日本とて同じことですが・・

日本の良いところはトランプみたいな変な指導者がいなかった、ということでしょうか。

その結果、本の題名通り事前の予想とは大きく異なってしまったのです。何故、このようになってしまったのか?構造的問題とは何か?

 

パンデミック対応とは労多くして功少ない、あるいはハイリスクローリターンというべきか、とても難しい取り組みであることを知りました。

例えば、先見力があり、行動力もある政治家が、9.11のようなテロが発生することを事前に予想し、航空機コックピットの入退出のセキュリテイ強化、飛行機搭乗者のセキュリテイチェック強化を実現させ9.11テロを未然に防止したとしたらどうでしょうか? 乗客は搭乗に時間がかかりすぎると文句を言い、航空会社はコストが増えただけとクレームをつけるでしょう。そして、その政治家は非難され次回の選挙で負けてしまうかもしれません。賞賛を受けるためには、悲惨な状況が発生し、それを解決、救うことが必要なのです。

パンデミック対応もそれと似ています。人々がまだ危険だと思っていない時期、例えば0.1%の感染者、人口10万人の都市であれば100人、が発生した段階でワクチンを全員に接種させる、ワクチンがなければ外出禁止処置、必ずマスクをつけよ、などの対策を実施しなければならないのです。うまく実施できたとしても、予想に反してパンデミックが発生しないかもしれません。そんな不確かな状況で確固たる命令をださないとパンデミックは防げません。しかも防げたとしても賞賛を受けるとは限りません。パンデミックを克服するには強いリーダシップと国民の理解が欠かせない、こんなことをこの本は教えてくれます。

今回のパンデミックが収まったとしても、また何年後かには同じような状況が発生すると思います。多くの人がこの本を読んでパンデミックに関する知識を深めてくれれば、いくらかでもそれに対する備えができます。一読することをお勧めします。

以上

それではまた。今日より明日のほうが進歩しますように。