女盗賊プーラン
女盗賊プーランを読んだので感想を書きます。
とても面白い。面白いと言っては著者に失礼であるが、映画を見ているような面白さがある。本を読みながら『プーラン危ない』などと叫んでいる。
プーラン・ラディというインドの下層カーストに生まれた女性の自伝である。彼女は字も読めないし、書けない。従ってこの本は彼女が口述したものをフィクソ社というところが文字に起こしたものである。
彼女の人生がすさまじい。生まれた年は正確には分からない。といってもさほど昔の話ではない。私と同世代の1958年頃の話である。この年代で生まれた年が分からない人など日本にいるだろうか。彼女は小学校高学年頃、初潮の始まる前に中年男性と結婚させられ凌辱される。その後、この男から逃げることになるが、家の中で村の男たちにレイプされる、警察に捕まれば警察のなかでレイプされる。家族の土地は親族に盗まれ、極貧の生活を送る。村の人たちは見て見ぬふりをして誰も助けてくれない。とにかく家畜みたいな生活を送るのだ。家畜でもこんなひどいことにはならないのでは。こんな物語を読んでいると私たちがなんと幸せな世界に生きているか、私たちの苦しみなどなんとちっぽけなことかと思わざるを得ない。
彼女は10代後半にひょうんなことから盗賊団に誘拐され、皮肉にもそこで人間的扱いを受け恋をすることになる。その後、盗賊として活躍することになる。盗賊といって金持ちから盗み、貧しい者に分け与えるいわゆる義賊なので貧しい人たちからは人気があった。インド政府にもそれなりの人はいたのだろう。その人の助力を得て、盗賊から足をあらい、その後、国民議会の議員にまでなる。ところが、議員になって4年後、恐らく40歳代で凶弾に倒れてしまうのだ。
これらはすべてカースト制度に由来している。カースト制度のひどさ、そしてプーランという人の強さを強く印象付けられる本です。
この本を読んだことをきっかけにカースト制度についてインターネットで調べてみた。分かり易い資料は見つからなかった。とにかく複雑なのはわかった。インド政府は指定カースト、指定部族、後進諸階級という3つのグループに対する支援政策を行っているらしい。しかし、最近でも身分の高い人の前で食事しただけで殺された、などという記事がみつかるのでまだまだ差別が残っているのだろう。民主主義で解決するのは難しいのではないか、プーランのように暴力には暴力で対抗するしかないのでは?などと考えてしまう。
それではまた、明日が今日よりすこしでも良い日になりますように。
以上