過払い金の実態とは
過払い金を取り戻そう、という宣伝がラジオによく流れる。よく聞く過払い金宣伝のスポンサーは司法書士法人である。相談料ゼロ、着手金ゼロを強調している。そんなに儲かるものなのかと思い、少し調べてみた。
1.どの程度の過払い金があるのか?
日本貸金業協会がレポートを出していた。
同協会では利息返還請求金額と呼ぶ。
2015年3月期 1809億円
2017年3月期 約1800憶円
2020年3月期 838憶円
と減少傾向であるが、いまだ年間800憶円以上の規模がある。
2.過払い金問題に取り組んでいる司法書士法人
日本司法書士会連合会という団体によれば、会員登録している司法書士は22千人、
また、Mentor Agentという就職転職サービスの会社のホームページによれば、
司法書士事務所等(公証人役場含む)の事業所数は 755事業所あるようだ。
そのなかで、どのようなところが過払い金問題に取り組んでいるのだろうか?
司法書士法人ランキングという記事があり、司法書士数の多い順に事務所をランキングしている。その資料から上位10社を抜き出してみると次の通り。
順位 | 法人名 | 都道府県 | 司法書士数 |
1 | 司法書士法人中央事務所 | 東京 | 111 |
2 | 司法書士法人リーガル・フェイス | 東京 | 64 |
3 | 司法書士法人キャストグローバル | 東京 | 53 |
4 | 司法書士法人山田合同事務所 | 神奈川 | 47 |
5 | 司法書士法人杉山事務所 | 大阪 | 42 |
6 | 司法書士法人中央ライズアクロス | 東京 | 35 |
7 | フクダリーガルコントラクツ&サービシス司法書士法人 | 東京 | 32 |
8 | 司法書士法人中尾パートナーズ | 兵庫 | 29 |
9 | L&P司法書士法人 | 大阪 | 26 |
10 | 司法書士法人四つ葉事務所 | 埼玉 | 21 |
全国に22千人程度いて、もっとも多い中央事務所でも100名程度なので、個人事務所が一般的なのだと思われます。
上記のなかで過払い金を自社のホームページで宣伝しているのは中央事務所と杉山事務所の2社だけでした。インターネットで過払い金を検索して出てくる司法書士事務所は上記のリストにはありませんでしたので、中小の司法書士事務所が多いと思われます。
3.過払い金は儲かるのか?
1)中央事務所のホームページでは
※2. 司法書士法人 中央事務所との間で2017年5月〜2017年12月にご契約いただいたお客様10,417名中6,162名に過払い金が発生。その平均額は約127万円(2018年7月2日時点)。
と書いてあるので、2017年5月から12月までの8か月で
約78憶円(=6162人*127万円)/8か月 程度
年間で 約117憶程度 程度の過払い金が発生したことになる。
ちなみに、日本貸金業協会の資料によれば2017年は1800憶円程度の返還金が発生しています。
2)杉山事務所のホームページでは
相談料・着手金 ゼロ円
であり、月5億円の過払い金返還があるとうたっています。
月5億円が正しいとすれば 年間60憶程度を返還していることになります。
2020年も同程度とすれば、トータルの過払い金800憶のうちの60憶程度なのでシェアは高いと言えると思います。
上記数値から中央事務所と杉山事務所で過払い金全体の2割程度のシェアをもっており、それ以外を中小の事務所あるいは弁護士事務所が扱っていると思われます。
多くの宣伝を出すくらいだからうまみのある商売なのだろうと思いましたが、
どの程度売り上げに貢献しているのかは、各社とも財務データは公開されていないのでわかりませんでした。
過払い金返還額は2015年から2020年にかけて半分以下に減っていますが、いまだ800憶円水準にあるので、まだしばらくこれをめがけて獲得競争が続くし、ラジオ宣伝も続くと思われます。
何かに役立つわけではないのですが、こんなことを調べてみました。
それではまた。今日より明日のほうが進歩しますように。
以上